2013年8月15日木曜日

将太の寿司1

将太の寿司1


寺沢 大介(講談社)

420円

1992年からマガジンSPECIAL で連載が始まりその後、週刊少年マガジンに移籍し続編の「将太の寿司〜全国大会編〜」を含め2000年までの8年間続いた、一人前の寿司職人を目指す少年・関口将太の成長を描いた1990年代の週刊少年マガジンを支えた作品の一つ。


作者の出世作「ミスター味っ子」の主人公・味吉陽一(あじよし よういち)は中学生ながらもプロ顔負けの料理の技術を持ち、独創的な発想で斬新な料理を作り上げる天才肌の少年料理人ですがこの「将太の寿司」の主人公・関口将太(せきぐち しょうた)は連載初期は寿司職人としての技術、知識は半人前で勤務先の鳳寿司(おおとりずし)では雑用しか任せてもらえません。

しかし”一日でも早く一人前になって自分の店を持ちたい”という情熱を持ち、地味ながらも基本的な技術を一つ一つ身に付けていき、ライバル職人達と競い合いながら成長していきます。

主人公が”天才”ではなく普通の少年で努力しながら一つ一つ課題をクリアして成長していく”スポ根=スポーツ根性”漫画ならぬ”料根=料理根性”漫画です。

今回紹介する一巻はマガジンSPECIAL 掲載時のエピソードで週刊少年マガジン移籍後のものと比べると将太の出身地、鳳寿司で修行するようになるきっかけ等の設定が若干異なります。

週刊少年マガジン版だと将太が寿司職人を目指すきっかけも含めて詳しく描かれていますし、小樽時代のライバル・笹寿司(ささずし)が悪辣、卑怯なのでよりいっそう主人公・将太に感情移入しやくすなります。


サヨナラの桜巻き・・・・父親が病に倒れた事がきっかけに家計を助ける為、関口将太は高校を中退し寿司職人を目指して名店・鳳寿司で修行を始める。

一年後、鳳寿司に将太の高校時代の同級生・藤原美智子(ふじわら みちこ)が客として訪れる。

高校時代、美智子に好意を抱きながらも素直に気持ちを伝えられずに後悔していた将太。

美智子が卒業と同時に家庭の事情で年上の男性と結婚すると知った将太は美智子への餞(はなむけ)として自分が握った寿司を食べてもらいたいと考えるが鳳寿司の親方から

「相応の握りが出せなきゃ店の恥になる。おめぇの握りには”型(かた)”がねぇ、型なしだ!!」

と一蹴される。

美智子の卒業まで一ヶ月。
その間に将太は親方を納得させる寿司を握れるようになる事が出来るだろうか?


・・・・この回でキーとなる寿司はタイトル”サヨナラの桜巻き”が示すように巻き寿司です。一ヶ月、みっちりと握りの練習をしたのに・・・・と思ってしまうのは自分の都合を相手に押し付けようとする自分本位の考え方なんでしょう。

「将太の寿司」を読み進めていくとこの先

小手先の技術よりも食べる人の気持ちを思いやる心配りが大事

という職人の心構えが何度も繰り返し語られるのですが、自分が一ヶ月練習した握り寿司だけにこだわらずに相手の心に響く巻き寿司も出した、ということは将太はこの時点で職人の心構えを誰に教えられる事もなく理解していたんですね。

親方「どんな名人、上手の作る料理でも今の将太の握る寿司より感動させる食い物はめったにねえぞ・・・!!」

父ちゃんの寿司・・・・同級生・藤原美智子との別れの日以降、将太は時間をみつけては兄弟子達に寿司の握りの練習をみてもらうようになった。

兄弟子・小政(こまさ)は将太の握る寿司はシャリとネタの”型”は良いが型を整えるまでに手数がかかりすぎてシャリがおにぎりのように固くなっており食感が悪い、と指摘する。

五手で一貫を握るのが基本でそこから四手、三手と手数を減らしていけるのが一流の職人なのだが今の将太は一貫握るのに七手かかっていた。
寿司職人の世界では一手減らすのに五年はかかる、と言われ一人前の寿司職人への道のりは長い、と実感する将太。

そこへふらっと将太と同じ位の年頃の少年が客として鳳寿司へやって来た。

横柄な態度の少年は小政の握った寿司を一口食べるなり

「俺の方がもっとましな寿司を作れる。勝負に勝ったら十万円いただくぜ!」

と言い放つ。

将太達が見つめる中ツケ場に立った少年はなんと、たったの一手で理想的な型の寿司一貫を握ってみせた。


超一流の腕を持っていた寿司職人”名人・佐吉”。一流ゆえに同僚の職人やお客にまで傲慢な態度をとるようになって周囲から相手にされなくなって落ちぶれた、という設定の割りに回想シーンではお客さんと普通にコミュニケーション取れてます^^;

回想シーンを見る限り(あの店の大将はクチは悪いけど人は悪くない)という感じでお客さんから愛されているように見えるので店の売り上げが急に悪くなったのは接客態度の良し悪しじゃなくて近所に激安の回転寿司チェーンでも出来たんじゃないか?それを自分の態度が悪いからだ、と考えて反省しているのなら佐吉は性格が悪いどころか真面目な人なんじゃないだろうか?と本筋からずれたところで色々と考えてしまいました。

わさびの気持ち・・・・少しずつだが確実に成長している働きぶりを親方に認められて今までは下ごしらえしか任せてもらえなかった小鰭(こはだ)の”酢〆(すじめ)”も任せてもらえるようになった将太。

ある日、鳳寿司にわさびを納めている小松わさび園の従業員・小林美那子(こばやし みなこ)が新しく作った新種のわさび”伸太郎”の味見をして欲しい、と尋ねて来る。

寿司職人の端くれでありながら寿司とは切っても切り離せない”わさび”について無知だった将太は美那子からアドバイスを受けるうち、わさび生産に携わる人達の気持ちを理解していくのだった。


将太、もうちょっと腹黒く要領良く生きられないのか?美那子の事が気になっているなら恋敵を美那子の元へ戻るように説得しなくてもいいのに・・・・と考えてしまうのはきっと私の性格に問題があるのでしょう^^;

「ジョジョの奇妙な冒険 第四部 クレイジーダイヤモンドは砕けない」の中で岸辺露伴が漫画の登場人物は読者に好かれるような性格じゃなきゃ駄目だ、と言ってたのを思い出しました。その点、将太は主人公としては満点です。



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2013年6月29日土曜日

アウターゾーン4(OUTERZONE 4)

アウターゾーン4(OUTERZONE 4)

光原 伸(集英社) 473円

33話から42話まで掲載されているビッグボリューム版4巻です。

40話の『黒帽子』は3巻掲載の30話『妖精を見た!』の続編です。私の記憶が正しければ週刊少年ジャンプ掲載時は複数話(ページ数から推測すると3話くらい)だったと思うのですが、この4巻では一話としてカウントしているようです。


この4巻から始まる『マジック・ドール』は当初からシリーズ物として企画されていたようですがこの”妖精”シリーズはそういうわけではないようなので、よほど最初の『妖精を見た!』の反響が凄かったんですね。私も当時は家で何か物がなくなるたびに妖精か!?Σ(゚Д゚;)とビクビクしていたものです^^


以下、各ストーリーの簡単なあらすじと感想です。

救命艇に死神がいる・・・・沈没した豪華客船から救命艇に乗り込み九死に一生を得た数人の男女。医薬品や食料が残り少なくなった頃、一人の男が海に伝わる奇妙な伝説を語り始める。
船が沈む時というのは必ず乗客か船員の中に人間そっくりに化けた”死神”が紛れ込んでいるのだ、と・・・・



沈没した客船から命からがら救命艇で逃げ延びたものの極限状態の中で次第に精神に異常をきたす人間達。海洋パニック映画っぽい展開です。しかし二時間で一本の作品を作る映画とは違ってページ数に制限がある一話完結の漫画だから仕方がない部分もありますが救命艇での漂流が始まってすぐに「この中に人間に化けた死神がいるかもしれない。」と言い出した男(小説家)の行動は空気を読めなさすぎですね。

メンバーの中にミザリィがいるので「この中に死神(人間以外の存在)がいる」というのは間違いではないんですけどね^^

マジック・ドール①・・・・刑事の火牙(ひが)はコカイン取引の捜査中に誤って無関係の女性・マキを死なせてしまう。
わけもわからずに死んでしまったマキは”死者の門”の門番から自分は死ぬ予定ではなく”死後の世界”側の手違いで死んでしまった事を告げられてショックを受ける。
既に自分の体が火葬されてしまった為、門番から特例として最近亡くなった人間の体に乗り移っても良い、と言われるが条件の合う(若く健康で美人で金持ちである事)人間が見つからず困ったマキは一計を案じる。

 今回、この話を読み返すまでマキは火牙の拳銃誤射で死んだのだと思い込んでいたのですが実際には犯人の拳銃から流れ玉でした。とはいえ「女(マキ)に家族がいなかったのが不幸中の幸い」と言ってみたり、ラストにマキの死がトラウマになる事もなく普通に悪党に向けて拳銃をぶっ放したりと火牙刑事って案外薄情だったんですね^^;



ここは、どこだ!?・・・・突然、街中で目を覚ました若い男性。彼には、何故自分がそこにいるのか?、自分が何者なのか?という記憶が一切無い。困惑しながらも本能に突き動かされるように”街”からの脱出を試みるが・・・・

週刊少年ジャンプ掲載時にはマジック・ドール①の次の回だったという事もあり何か設定上の繋がりがあるのかな?と想像を膨らませていました。

落ちたグラス・・・・超能力者に憧れる高校生・村井は事故で頭を強打した事がきっかけで念願の超能力者になった。
村井は超能力を使ったスプーン曲げでクラスの人気者になるが人気に嫉妬したクラスメートが絡んできた。その時、突然クラスメートの腕に激痛が走り骨折してしまう。


超能力に目覚めた人間の葛藤が描かれた話。小学生の頃、クラスの人気者になりたくて手品の練習をした経験があるので物語り前半の村井は羨ましい限りです。

物語のクライマックスで人前で超能力を披露して”周囲から好奇の目でみられたり怖がられる”か”教祖扱い”されるかで村井が悩む場面がありますが私だったら”教祖扱い”される事を選びます^^

マジック・ドール②・・・・”死後の世界”の手違いで死んだ女性・坂内マキ。彼女は現世に戻る為に一時的に着せ替え人形に魂を宿らせ、自分が死ぬきっかけを作った火牙刑事の元に身を寄せ同居生活を送っている。

マキとの同居生活が始まって以来、周囲から着せ替え人形マニアだと誤解され始めた火牙。彼は誤解を晴らす事が出来るのだろうか?

話の本筋とはずれますが火牙刑事、外車に乗ってます。公用車とは思えないので自家用車を仕事にも使っている、という事でようね。

パッと見だと外観はフェラーリかランボルギーニっぽいので刑事の給料で買えるとは思えないし・・・・火牙刑事の実家はかなり裕福なのかな?
新車ではなく中古、という可能性もあるけどフェラーリ、ランボルギーニなどの超スーパーカーだと年式や車の状態にもよるけど中古でも国産の高級セダンを新車で買うくらいの値段はするしそれだけの金を払って中古のフェラーリorランボルギーニを買ったのならかなりの”カー吉”という事?

ゲームの達人・・・・勉強や運動が苦手で家にも学校にも居場所がない高校生・古橋。

彼は日常生活の鬱憤を晴らす為にゲームセンターに入り浸り、周囲の客から一目置かれるようなゲーマーになるがそこはミザリィが経営するゲームセンターだった。

格闘ゲームがこの話の重要アイテムになってます。現実の世界では1980年代後半から1990年代前半頃はアーケード版の格闘ゲームが流行しており私自身も(小学生の感覚としては)かなりの金額をつぎ込みました。

またこの頃は格闘ゲーム以外にテトリスに代表される落ちゲーも一世を風靡しており、同年代のゲーム好きは格闘ゲーム派と落ちゲー派に分かれてたのを思い出しました。

無情の街・・・・人類が宇宙に進出した未来。
厳しい環境と当局に管理された生活、人口密度の高さから地球の植民星で生きている人達は人間性を失っていた。

路上で人が死んでしまっても誰も関心を示さず、稀に困っている見ず知らずの人を心配して声をかける者がいれば声をかけた者が不審者扱いされるような環境の中、植民星の生活に馴染めない女性・リサはある日、一人の親切な男性・ルークに出合う。

こういう”歪んだ体制に違和感を感じる少数の人間の物語”は長編漫画ならば協力者、理解者らと出会って体制を変化させる、という結末に向かって徐々に話を展開させていく事が出来ますが一話完結のアウターゾーンの場合はどうなるのかな?と期待しながら読み進めたのですが・・・・そう来ましたか^^;

二巻掲載『森の妖怪』みたいな思い切った展開のハッピーエンドでも良かったと思うのは私だけでしょうか?

黒帽子・・・・かつて恐ろしい妖精に襲われた少年・長坂。

16歳になった今も当時の恐怖を引きずって生活していた長坂は高校の美術部の合宿に参加した夜、以前よりも凶暴な種族の妖精・黒帽子と遭遇してしまった!!

ホラー映画でも一作目がヒットして続編が製作される場合は一作目よりも主人公達がおかれる状況はより切迫したものに、モンスターもより凶暴に、という具合になっていくのが当然ですがアウターゾーンの妖精シリーズも例外ではありません。前回の妖精は”人間に姿を見られたから”という理由があって人間(長坂)を襲ったわけですが今回の黒帽子は特に理由もなく人間を食べる為に襲ってきます。

しかも前回は長坂に親切だったミザリィも何故か今回は積極的に妖精退治に協力してくれないし^^;

老化・・・・「皺(しわ)だらけで動きは鈍いし、あんな見苦しい生き物になるくらいなら死んだ方がマシ。」と高齢者を蔑む不良高校生。
ある日、街で高齢の女性占い師に因縁をつけ金を脅し取るが仕返しとして”ある呪い”をかけられてしまう。

あらすじでは”ある呪い”と勿体つけて書きましたが、タイトルから予想出来ますね・・・・”老化してしまう呪い”です^^;

後書きで光原 伸先生が老人介護施設で働いている方から抗議を受けた、という主旨の事を書いています。詳しい事はわかりませんが、もしかしたら”悪さをした罰として老人になる呪いをかけらる”というのが”年をとる=嫌なこと”という風に感じた人もいるのかもしれません。

しかしこの話の主人公が「皺(しわ)だらけで動きは鈍いし、あんな見苦しい生き物になるくらいなら死んだ方がマシ。」という考えの不良高校生なので、本人が死んだほうがマシだと思っている”老人になる”という目に合わせる事が罰になっているだけで一般論として”年をとる=嫌なこと”とう事ではないのは当然です。

結末はあまり後味の良いものではありません。

マジック・ドール③・・・・マキが死ぬ原因を作った火牙刑事と着せ替え人形に乗り移ったマキ。時折衝突しながらも折り合いをつけながら奇妙な同居生活を続ける二人。そんな二人の生活を監視するように向かいのマンションから覗く人形マニアの男がいた。

数年前にVillage Vanguard (ヴィレッジヴァンガード)でジョジョの奇妙な冒険』の超像可動シリーズのフュギュア・第三部スタープラチナを偶然見かけて購入した事がきっかけでそれ以降、超像可動シリーズの新作をチェックするようになったのでこの人形マニアの気持ちが少しわかるような気がします。

フュギュアは生産数が少ないので一度買い逃すとなかなか入手出来ないので、自分が持っていない物を見かけると欲しくなってしまうんですよね^^;

でも窃盗はいけませんねw

アウターゾーン 4 (OUTERZONE 4):光原 伸



2013年3月8日金曜日

アウターゾーン3(OUTERZONE 3)

アウターゾーン3(OUTERZONE 3)

光原 伸(集英社) 473円

アウターゾーン22話から32話までが掲載されているビッグボリューム版の第三巻です。

表紙のイラストはビッグボリューム版の紙の本が出版された時に書き下ろされた物で週刊少年ジャンプで連載されていた頃の物とは違いますが一巻二巻と比べるとミザリィの露出が多くなってきてますね^^;

中身のストーリーはSFやオカルトがメインでエッチな表現は(週刊少年ジャンプ連載作品なので当然ですが)少年誌で許される範囲のサービスカットがあるだけなのに表紙が”ミザリィ押し”なのは相変わらずでそれがかえって懐かしいです(笑)


一巻二巻は全て一話完結のエピソードばかりですがこの三巻で初めて二話にまたがる続き物のエピソードが登場します。

23、24話の『タイムスケープ 前後編』

個人的にはこの三巻に掲載されている『見えない男』、『妖精を見た!』、『タイム・ストッパー』の三作は週刊少年ジャンプで初めて読んだ時の印象が強かった作品です。

以下、各話の簡単なあらすじと感想を紹介します。

本心・・・・平凡な高校生・梨村和也の最近の楽しみは学校帰りに骨董屋に立ち寄る事。といっても和也は骨董品に興味があるのではなくその店の店主、ミザリィに片思いしているのだ。
ある日、いつものように和也が店に入ると思いがけずミザリィに声をかけられ二人はデートをする事になるが・・・・


ミザリィの悪魔!いたいけな青少年になんて罠を仕掛けるんだ!!と大声で言いたいです。妙なグッズの呪いや不吉な未来を暗示する予言などは切り抜ける自信はあってもこの罠に心を惑わされない男性はいないはずです(笑)

タイムスケープ 前後編・・・・現在から50年後、人類は長年の夢である”時空移送機(タイムマシン)”の開発に成功したが世界は”時空移送機(タイムマシン)”の技術を独占する一つの独裁国家に支配されていた。
”時空移送機(タイムマシン)”の開発者であるキリシマ博士は独裁国家の支配者・大佐に反旗を翻し、”時空移送機(タイムマシン)”の存在を歴史から抹消する為に刺客を過去の自分の元へ送り込むが・・・・


自動車は交通規則を守って安全に乗れば便利だけど速度違反や信号無視をすれば危険な凶器だ、というように
「”危険な道具”があるんじゃない、道具の使い方を誤ると”危険”なだけだ」
と言われる事があります。

自動車ですらハンドルを握れば暴走する人間がいるのだから”時空移送機(タイムマシン)”なんて超兵機を人類が手に入れたら遅かれ早かれこういう世界になってしまうでしょうね^^;

この作品が発表されたのは1992年。現実世界では1990年に当時のサダム・フセイン大統領が指揮したイラク軍が隣国クェートに突如侵攻した事がきっかけで国連が多国籍軍を派遣した”湾岸戦争”が勃発しています。そういう世界情勢もあり当時は”サダム・フセイン”は独裁者・暴君の代名詞的存在でした。50年後の世界を支配している大佐のモデルはどうみてもサダム・フセインです。

2001年9月11日の「アメリカ同時多発テロ事件」をきっかけに始まったアメリカの対テロ作戦の流れで始まったイラク戦争によって2006年12月30日に死刑(Wikipedea/サダム・フセインより)・・・・時の流れを感じます。

消えた球(ボール)・・・・有川陽一は硬派ぶって誤魔化しているが女の子と話すのが苦手な高校球児だ。ある日、どこかから不意に飛んできた球(ボール)が頭にぶつかった衝撃で陽一は男性の頭の上には青色の、女性の頭の上には赤色の不思議な玉が浮かんで見えるようになった。


最後まで読み終えた後(玉の色が違う理由を知った後)に頭の上に浮かぶ玉の色が違うカップルの事を考えると少し笑えます。まぁ、大きな黒い玉が浮かんでないだけましかな(笑)

デス・フライト・・・・飛行機のファーストクラスで若い女性客が不審な死を遂げた。彼女の死体からは大量の血液が抜き取られており、首元には牙を突き立てられたような二つの穴が!!犯人は吸血鬼!?


密室の中で人が死に、事件の関係者を一堂に集めて犯人探し。
当時は『金田一少年の事件簿/原作:金成陽三郎(case2巻まで担当)、天樹征丸作画さとうふみや』が1992年に週刊少年マガジンで連載が開始されてヒットし推理物が漫画のジャンルとして成立した頃だったのでこういう路線のストーリーを作ったのかと思っていたんですが光原伸先生の後書きによるとあるホラー映画をモチーフにしたそうです。

ネタバレになるのでここでは詳しく書けませんが後書きには映画の内容にも触れられています。しかし先生自身もこの映画のタイトルは忘れてしまったそうです^^;私もこの映画について知りたいでの、心当たりのある方はブログのコメントなどで教えては頂けないでしょうか?

見えない男・・・・人付き合いが悪く仕事も出来ない男・細井。彼は内心では周囲の人間を馬鹿にしているが口に出す事も出来ない小心者。
日頃のストレス発散の為に無作為にイタズラ電話をかけるが電話を受けた相手はミザリィだった。
「あなたみたいに卑劣な小心者にぴったりの薬があるわ」
そう言ってミザリィは細井に”体を透明にする薬”を薦める。


もしも透明人間になる事が出来たら~してみたい・・・・誰でも一度くらいは考えた事がありますよね。漫画、小説などでもよく使われているネタで、一番多いのは透明人間になった男が女子更衣室などに潜入したところで薬の効果が切れて覗きがばれるというくらいの軽いオチが付くみたいなパターンですが細井の行動はそういう少年誌の枠には収まるような範囲の悪事だけではなかったのでオチがかなり悲惨な物になっています。


”軽いオチ”というのは漫画、小説などのフィクション世界の場合です。現実だったら覗き行為をしてばれたら人生が終了するくらいの事です。当然ですが覗き行為をしてはいけません!

不幸の確立・・・・幼い頃から(自分はツイていない、どうして不幸な目にばかり遭うのだろう)と考えている少年。
「あなたの未来に起きる不幸な出来事を占ってFAXで送ってあげる」
と言う言葉を信じて彼はミザリィの占いの客になる。FAXで事前に不幸な出来事の内容がわかるおかげで不幸を避ける事が出来て喜ぶが送られてくる”未来に起きる不幸”の内容が日に日に過激になっていく。


占いの内容が送られてくるツールがFAXという部分に時代を感じますね。今だったら電子メールとかSNSでのやり取りになりそうですね。
小学生の時、この話を読んで”人間万事、塞翁が馬”という故事ことわざの意味を理解しました。そういう話です。

あと本筋から離れた所で、電車の中で痴漢に間違われた男性と痴漢被害に遭った女性がその時の出合いがきっかけで数日後に恋人同士になる、という今だったら「いくら漫画でも不自然でありえない!」と編集段階で没になりそうな展開があるのですが当時は(痴漢に間違われてもきちんと説明すれば誤解だとわかって貰える)と考える人が多かったという事なんですね^^;

1992年頃

妖精を見た!・・・・普段はよく見かける物が必要な時に限って見当たらなくなり必要がなくなってからひょっこりと出てくる
誰でも何度か経験する事だが小学生の想一はミザリィから
「それは妖精の仕業かもしれない。ただし妖精は人に見つかる事を嫌うので見つけても見なかったふりをしなさい」
と忠告を受ける。
姿を見た事を妖精に知られたら命はない
とも・・・・


妖精といえばピーターパンのティンカーベルみたいに可愛い存在を思い浮かべる方が多いと思います。私もこの話を読む前はそうでしたが『妖精=可愛い』から『妖精=怖い』へとイメージが一変しました。ジブリ映画の『借りぐらしのアリエッティ』みたいに人間の物をを拝借してこっそり暮らすタイプの妖精、小人なら会ってみたいけどこの話に出てくる妖精は遠慮したいですね。

ちなみにこの話は詳しくは書きませんがラストが今までの話と比べると少々珍しい事になっています。

吸血鬼の町(ヴァンパイア・タウン) 前後編・・・・アメリカの某所。二人の男がゴーストタウンと化した町に辿り着く。男達は寂れた小屋の地下室で胸に杭を打たれた奇妙なミイラが納められた棺桶を発見する。
半年後、付近の町では旅行者などが行方不明になる事件が頻発するようになっていた。


前後編の二部構成ですが(えっ!?これで終わり?)という中途半端な結末です。

アウターゾーンが週刊少年ジャンプに連載されていた時は欠かさずに購読していたのでこの話も一度は必ず読んでいるはずなのですが今回、Kindle版を購入するまで印象に残っていませんでした^^;

タイム・ストッパー・・・・ミザリィのハンドバッグをひったくった不良高校生。バッグの中の腕時計に目を付けて時計盤の脇のボタンを押した時、体に突然衝撃が走り驚くが落ち着いて周囲を見回すと自分以外の全ての動きが停止していた。



TBS系のテレビドラマ『SPEC 警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿』で神木隆之介が演じた一 十一(にのまえ じゅういち)を観た時、この話を思い出しました^^;

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2013年3月1日金曜日

探偵はバーにいる

探偵はバーにいる (ススキノ探偵シリーズ) 

東 直己(早川書房)

571円

私がKindle ストアでこの作品を買った時は値引きセールの対象になっており286円で購入しました


2011年9月10日に大泉洋松田龍平主演で公開された映画探偵はBARにいる』の原作、ススキノ探偵シリーズの第一作。

映画一作目は小説二作目「バーにかかってきた電話」を原作にしておりタイトルのみシリーズ一作目の本作品から取っている(Wikipedeaより)。2013年5月11日に映画第二弾探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点』公開


映画一作目はまだ鑑賞していないんですが二作目が公開されるという事は一作目もヒットしたという事ですね。

二作目公開前にDVDをレンタルでもしようかな・・・・と考えていたところに、この『探偵はバーにいる』が前述のとおりKindle ストアでセール対象になっていたので購入してみました。

以下簡単なあらすじと感想を書いていきます。

札幌の歓楽街・ススキノで”便利屋”を生業にする”俺”。
ある夜、行きつけのバー・ケラーオオハタに大学の後輩・原田が訪ねてきた。同棲している彼女が行方不明になったので捜して欲しい、と泣きつく原田の話を(どうせ痴話喧嘩の末に女が男に愛想をつかした、という類の大した事のない話だろう)と軽い気持ちで引き受けた相談事だが調べていくうちに”俺”は彼女の周りで不審な出来事が起きている事に気づく。


世間的には職業不詳、自称”便利屋”の”俺”が主人公。
警察やヤクザ、果ては得体の知れないチンピラ共が絡んでくるような事件に巻きこまれながらも大した報酬は貰っていないようだし、周囲から”探偵”として面倒な相談を持ちかけられると「俺は探偵じゃないよ」と言いながらも結局は引き受けてしまうところをみると”俺”は人が好いようだ。

この作品は”俺”がかかわるススキノの人達(バーや風俗店の客引き、ホステス、娼婦、馴染みの居酒屋の店主など)が、”俺”とストーリーの本筋とは直接関係ないやりとり(会話など)をするような場面がちょくちょく出てくる。読者目線で見ると初めて登場する人物でも作中では”俺”とススキノの人達は顔馴染みなので他愛の無い会話や冗談を言い合ったりもしている。”俺”にとってみれば大学の後輩から頼まれた『行方不明の彼女を捜す』というのは本業(ぼったくりバーのカモになった客と店側の仲裁、トランプ博打での小遣い稼ぎ、バーの売掛金の回収など)の間にやる、些細な事という感覚でいるようで行方不明の女性を必死に捜したりはしない

つまり読者は積極的に事件を追う探偵の姿ではなく、小さな裏家業をこなして日銭を稼ぎながら気ままに暮らす、過去に何かがあった青年(28歳だが作中ではチンピラ共から”おっさん”、”じじい”などと呼ばれている)が、後輩にせかされながら渋々と事件に巻き込まれていく様子をみる事になる。

ミステリーの要素もあるが(事件の犯人は誰なのか?真相は?)などを推理するのがこの作品の醍醐味ではないと思う。

そういうミステリー要素よりも、事件を追ううちにかかわってくる謎の女や旧知のヤクザと"俺”の皮肉の利いた会話(ヤクザに”仲間”扱いされた”俺”が「俺は乞食じゃないよ」とか、「口にするのも恥ずかしいような事」と聞かされて「あんたが”言うのも恥ずかしい”てんなら相当なもんだよなぁ」と言ったり)の場面が見所。そういう台詞をニヤリとしながら読める人は読んでみてはどうだろう。

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2013年2月11日月曜日

アウターゾーン2(OUTERZONE 2)

アウターゾーン2(OUTERZONE 2)

光原 伸(集英社) 473円

アウターゾーンの2巻です。
一巻に掲載されていた第一部(ママと悪魔~デス・ファイヤー)の終了後から約半年の充電期間をおいて週刊少年ジャンプ1991年51号から再開された第二部の一話(全体を通しては11話)から掲載されています。

第二部からミザリィは”いわくありげな品物”を取り扱う店(その時々でアンティークショップだったり画廊だったり占いの館だったり業種はかわります)『美沙里』を活動拠点にして悩みを持った人達が客として訪れるとその悩みを解決する為の不思議グッズを授ける、という”ドラえもん”的な話が多くなってきます。(不思議グッズの取り扱いを誤った場合に持ち主が受ける罰はジャイアンにボコボコにされる、とか学校で廊下に立たされる、くらいじゃ済みませんけど)

本編(11話・フォーチュン・リング)開始直後に登場するミザリィ、髪の光沢の具合など第一部の初登場時よりも丁寧に描かれているような気がします。

第一部開始前は10週終了が前提だったけど第一部の人気を受けての再開だっただけに再開直後は絵にも力が入っていたんですね、たぶん^^

その辺に注目してみると週刊少年ジャンプではじめて第二部を読んだ時のアウターゾーンが帰ってきた!!という喜びの気持ちが蘇って来ます。

フォーチュン・リング・・・・自分では何もせず、幸運が向こうの方からやってきてくれれれば良い・・・・人間なら誰でも一度くらいは考えた事があるだろう。高校生の森沢英利菜もそんな願望を持つ普通の女の子だった。学校帰りに立ち寄ったミザリィの店で、身につけるだけで”幸運”になれるフォーチュン・リングを手に入れるまでは・・・・


皆さんも雑誌などで○○を身につけたらギャンブルで大儲け出来るようになった!!異性にモテるようになった!!みたいなキャッチコピーと共に札束を手にして美女に囲まれたおっさんの写真が掲載された”開運アイテム”の広告などを目にした事があると思います。巷には藁(わら)にもすがる思いの人たちを鴨(かも)にするようなインチキグッズが溢れていますが中にはフォーチュン・リングのように”アウターゾーン製の本物”も紛れ込んでいるかもしれません。運良く”アウターゾーン製の本物”を手に入れても幸福になったと感じる事が出来るかどうかまではわかりませんが・・・

悪魔の棲む家・・・・寂れた小屋の中からジッとこちら側を眺めている怪物が描かれた絵画”断頭の家”を手に入れた夜、ホラー作家だった父親が不審な死を遂げた。十数年後、父の死の真相を探る少年は偶然立ち寄った画廊『美沙里』で再び”断頭の家”と巡り合う。



素晴らしい芸術(音楽、絵画、彫刻etc)が時代を超えて愛されるのは作品に製作者の情熱が込めれれているから、という言い方もされますが込められているのが受け取る側に良い影響を与える+(プラス)の物ばかりとは限らない、という事でしょうか。

そういえば皆さんは小学校の頃、音楽室に飾ってあった昔の音楽家(ベートーベンやバッハ、ショパンなど)の肖像画の瞳が時々自分を見つめているような気がした事はありませんか?

悔恨・・・・ドライブ中に好奇心から死亡事故が多発し”魔のカーブ”といわれる峠道へ向かった誠はハンドル操作を誤り事故を起こし、同乗していた二人の友人を死なせてしまう。友人を死なせてしまった事がトラウマになった誠は車の運転が出来なくなっただけでなく、毎日を無気力に過ごすようになった。そんな彼がある夜、偶然乗り合わせたバスが事故を起こすが・・・


不思議グッズや凶悪なモンスターなどは出てこないので派手さはないが一巻収録の『あの日から』同様に大人向けの”ちょっと良い話”。(登場人物の台詞が説教臭く感じる場面がいつくかありますが)

わしはサンタじゃ!!・・・・今日はクリスマス。小学生の誠は大切にしていたおもちゃのロボット”ロボダーX(エックス)”を無断で捨てられた事から母親と大喧嘩をして家を飛び出してしまう。誠は路上で出会いがしらにぶつかって怪我をさせてしまった老人を自宅アパートまで送っていくが,どこからみても”普通のおじいさん”にしか見えないこの老人が突然
「自分はサンタクロースだ。」
と言い出す。


クリスマスプレゼントに限らず、お歳暮、お中元などを送る、受け取るという事が当たり前の”ただの年中行事”なっているのを反省させられる話です。子供だけでなく昔子供だった人も世代を問わず、心に響く話だと思います。

ロボット嫌い・・・・舞台は地球から遠く離れたある星に人類が資源採取目的で建設した基地。危険な作業は高度な人口知能を持つロボット達が担当しているが基地を管理するマサキ伍長はロボット達に嫌悪感を抱いていた。


ロボットを嫌って虐待するマサキ伍長vs素直に命令に従う可哀想なロボット達、という構図なのでアウターゾーンのパターンとしてマサキ伍長の最期を自分なりに想像していたんですが・・・・読み終えた時、子供の頃にはじめてこの話を読んだ時にロボット達とマサキ伍長の関係性に衝撃を受けたのを思い出しました。

人質・・・・ある夜、一人の男がコンビニに強盗に入った。男はコンビニに居合わせた女性客を人質に取り車に乗り込み、警察を振り切る事に成功するが・・・・人質に取った女性客はアウターゾーンの案内人(ストーカー)ミザリィだった。


人質になる、という設定もあり今までの話しと比べるとミザリィがストーリーに大きく絡んできますす。ミザリィの強盗に対する皮肉を利かせた台詞が印象的ですね。

「私が店にいる時に強盗に入るなんて・・・・不幸な男ね!」
「強盗をなさる皆さんに忠告しておきましょう。私を人質にとるのはやめた方がいいですよ。」

・・・・幼い頃から自分の容姿に自身がない少女・愛恵(めぐみ)。ある日、愛恵は自分をいじめる学校の不良から逃げる為に車道に飛び出すが、通りかかった高級車が愛恵を避けようとして事故を起こしてしまう。高級車に乗っていた資産家の両親は死亡し同乗していた一人息子・明(あきら)は事故の影響で失明してしまう。


明の叔父夫婦と許婚が”あんな事”になったので愛恵は”こうなる”のだろうな、と予想が付くんですが善人が幸せになる話は良いですね、やっぱり。アウターゾーンは悪人が手痛い罰を受ける(最悪の場合は死ぬ事もある)ラストもありますがそういう場合は後味が良くない事もありますからね。

森の妖怪・・・・険しい山に囲まれた土地にひっそりと存在する村。村のはずれの森には人食い妖怪が棲むという言い伝えがあり中に入る者はいない。
3歳の時に両親を亡くした美里は村長の家で朝から晩までこき使われていた。美里が年頃になったある日、村長の息子・吾助は美里を森の中に誘い出し手篭めにしようとするが抵抗した美里は足を滑らせ崖から転落してしまう。
崖下では恐ろしい姿をした生き物が転落してきた美里の様子を伺っていた。



登場人物の衣装とかが江戸時代のような雰囲気なので昔話の『泣いた赤鬼』みたいに”恐ろしい姿をした怪物”が(美里を助けたことで)村人達に受け入れらて幸せになる、という話だと思っていたら見事に予想を裏切られました。村長親子、村人達は性悪なので”あのラスト”も納得です。

魔神の手・・・・父親から引き継いだ古書店を営み好きな本に囲まれならがらのんびりと暮らす高崎の元に突然、大学時代の友人・加藤が三年ぶりに尋ねてきた。
金に困っている加藤は高崎に「”ある物”を買って欲しい」と持ちかける。


高崎さんが無欲すぎますね^^
私の元にこのアイテムが回って来ていたら人類、地球が終わっていたかもしれません。

殺したのは誰?・・・・大学入学と同時に一人暮らしを始めた由美は18年間恋人が出来なかったことにコンプレックスを感じていた。友人の勧めで良く当たると評判の占い師(ミザリィ)を尋ね恋愛運を見てもらうとミザリィは「近いうちに理想的な人に出会う。名前は”和樹”」と告げ”和樹”の詳細な似顔絵まで書いて見せた。
それ以降、由美の周りで不思議な事が起こり始める。
由美に乱暴しようとした男性や、つらく当たった人間が”何者か”に殺され始めたのだ。


子供の頃「”和樹”の正体は○○だ!もし○○じゃなかったら●●だ!!」と二重に予想していたら見事なくらいに外れてしまった懐かしい話です。

人面瘡・・・・高校受験を控えた少年は成績が思うように伸びずに悩んでいる時に見かけた”頭の良くなるアイテムあります”というチラシを見て、胡散臭いと思いながらも藁(わら)にもすがる思い出アンティークショップ美沙里を訪れる。
ミザリィがいう”頭の良くなるアイテム”とは、ある妖術使いの体に出来た、人の顔の形をした瘤(こぶ)を切り取って作成した”人面瘡(じんめんそう)”。
”人面瘡”を体にはりつけるともう一つの頭として働いてくれるが、”人面瘡”は信頼出来る人間にしか貸し出さない」とミザリィに言われた少年は「一週間だけ」という約束で”人面瘡”を借り受ける。


受験とは縁の無かった小学生時代は(妖術使いの体に出来た、人の顔の形をした瘤(こぶ)を切り取って作成した”人面瘡(じんめんそう)”?そんな気味の悪い物を体に付けるなんて馬鹿か?)と鼻で笑っていたものですが受験を経験した後に読むと少年の気持ちも理解出来ますね。

自分も受験時、神社や御寺で学業成就の御守りを買ってましたから。特に最後の追い込みの時期になると(どんな物でも良いからすがりたい)気持ちになるものです。

でも受験は自分の実力で挑むものであって御守りなどは気休めにしかなりません。まして”人面瘡(じんめんそう)”に頼ってはいけません!!

アフィリエイト広告アウターゾーン 2 (OUTERZONE2):光原 伸



2013年1月31日木曜日

アウターゾーン1(OUTERZONE 1)

アウターゾーン 1 (OUTERZONE 1)

光原 伸(集英社)
473円で購入

1991年から1994年まで週刊少年ジャンプに連載されていた作品。例外もあるがほぼ一話完結形式で、現実と隣り合わせに存在する世界(アウターゾーン)に迷い込んだ人間が巻き込まれる事件をアウターゾーンの案内人(ストーカー)である不思議な美女・ミザリィが紹介していく、という体裁で進行していく漫画です。

”案内人”を”ストーカー”と呼ぶのは1979年公開のロシア映画「ストーカー」に由来するようです。

ミザリィはあくまで不思議な出来事、事件を読者に”紹介する”だけで毎回数コマくらいしか出番はありません。不思議な出来事、事件を乗り切るのはその一話限り登場する普通の人達です。

3年間も連載されていたので一定数のファンが存在するのは間違いないのですが同時期に連載されていたバスケットボール漫画の金字塔『SLAM DUNK/井上雄彦』や幽霊や妖怪とのバトル漫画の『幽☆遊☆白書/冨樫義弘』『地獄先生ぬ~べ~/原作:真倉翔・作画:岡野剛』などと違いアニメ化はされなかったのでそれらと比べると”知る人ぞ知る”少しマイナーな作品という印象は否めませんね^^;

私はファンだったのですが単行本の表紙に小学生男子が購入するには躊躇するエッチな感じのイラストが描かれていた事もあり連載時には購入出来ず、大人になってから何度も(もう一度読みたい)と思っていました。

約二十年前の作品なので新刊購入は当然無理だしamazonのマーケットプレイスなど中古市場で売りに出されているのはたまに見るものの商品の程度が確認出来ないのでずっと購入は見送ってきました。

しかしkindlepaperwhiteを入手してKindle ストアをチェックしていると、そのアウターゾーンが売りに出されているじゃないですか!!・・・・もちろん即購入しました^^b

ここまで作品に対する私の思い入れなどを紹介しましたが以下はこの巻掲載の各ストーリーの簡単な説明と感想などを書いていきます

ママと悪魔・・・あるマンションに母親と小学生の男の子が二人、母子家庭として暮らしている。母親はカルト宗教の信者。週末などに息子を連れて近所を訪ね歩き布教活動を繰り返すが上手くいかず、息子を虐待している。

ミザリィの不思議グッズを手に入れたあたりから母親の行く末は容易に想像がついてしまいますがそのラストに行き着くまでの展開が男の子にとって酷すぎるので規定路線のラストも”すかっとさわやか”爽快な気分になります。お隣のおねぇさんの存在もラストへの良い伏線になってます。

幸運の首・・・舞台はアメリカ。孤児院育ちで貧しい暮らしをしている男・ラリィは恋人・シンディと共に一攫千金を夢見てギャンブルが公認されている某都市にやってきた。
負けがかさみ家路につこうとした時、ラリィは路上の売店で不思議なお守り”幸運の首”を手に入れる。売店の店員(ミザリィ)の説明によると”幸運の首”は生前に強力な霊能力を持っていた呪術師が死後も霊能力を保つ為に自ら首を刎ねたものを干して乾燥させた作らせた、本物の干し首らしい・・・・

ラスベガスだと思いますが作中では何故かこのようにギャンブルが公認されている”某都市”とぼかした表現になっています。


”不幸な生い立ちの青年が不思議グッズを手に入れて大金を手に入れる”と言う単純なストーリーかと思いきや不思議グッズが呪術師の乾燥生首ですからね・・・・やっぱり一筋縄ではいきません。アウターゾーンに迷い込んだ人間は他力本願では幸せになる事は出来ません。

占いピエロ・・・りまは親友の麻紀が呆れるほどの占い好きの女子高生。
ある日、二人は学校帰りに地下街にある占いの店に行くが店の前には大勢の客が行列を作っていた。暇潰しに地下二階の寂れた店舗街を散策した二人は奇妙な占いマシーンを見つける・・・・


子供の頃によく行っていたゲームセンターに同じようなピエロ型占いマシーンがあったので雑誌掲載時に読んだ後はしばらくの間、そのゲームセンターに行けなくなりました(笑)
占いに頼りたい気持ちもわかるけど度を越すと怖い事になるよ、という教訓的な話ですね。

真夜中の獲物・・・高級車を駆り繁華街に繰り出し、女性を物色する男。
今日も首尾よく一人の女性を誘う事に成功したが男の目的はナンパではなく、快楽殺人のターゲットをみつける事だった!


高級車でナンパとかバブルの余韻を引きずっていた時代を象徴する設定ですね。
高級車に乗った男性にナンパされても簡単について行っては駄目!快楽殺人は絶対駄目!!ですね。

あの日から・・・ある暴力組織の下部構成員・江藤明。
1991年、彼は対立組織の幹部を襲撃する鉄砲玉の役割を任されるが反撃を受け自らも重傷を負ってしまう。タクシーを拾い現場から逃走するが行きついた先は1971年の故郷だった。


良い話なんだけどこれは子供向けというより”大人向けの話”です。小学生の時に読んだ時は人生の分岐点とかいわれてもピンと来なかったけど大人になった今なら理解出来ます。と言うか大人でなければ理解出来ないでしょう。
掲載誌が週刊少年ジャンプでありながらこういう”大人向けの話”が時々あったのもアウターゾーンが”知る人ぞ知る”少しマイナーな作品になってしまった一因かもしれません。

呪いの人形を追え!!・・・典子はニューギニアから帰国した父親が購入してきた”呪いの人形”に好奇心から自分の髪の毛を入れてしまう。観光客向けに作られた偽物だと思っていたのだが、それは本物の”呪いの人形”だった。


この話に関しては「そんな気味の悪い人形を買うなよ!」としか言えません(笑)
これは”読後に何か心に残る”という事もない、単純にオカルト的な物”呪いの人形”を題材にした娯楽漫画です。お父さんが元・高校球児で良かった^^b

解放者達(リベレーターズ)・・・ペットの飼育が禁止されているマンションに引っ越す事になった一家。父親は息子が寝静まった夜に車を走らせ飼い犬・ブチを山に放置するがその帰り道に事故を起こしてしまう。その一週間後に目を覚ますと地球は犬型宇宙人に征服されていた。


某有名SF映画の影響がうかがえる話。
私も子供の頃に犬を飼っていましたが、犬を飼い始める前に両親から最期まで責任を持って飼う事が出来ないなら許可しないと言われました。またペットの話とは少しずれますが幼稚園の頃に自分がされて嫌だと思う事は周囲の人にしてはいけないとも言われました。そういう事を思い出させてくれるエピソードです。

笑う校長・・・体罰で生徒を死なせてしまった教師・鬼瓦豪助。”生徒を殺した事”で解雇された彼は”ある私立高校”からヘッドハンティングを受ける。


体罰の問題は時代に関係なく存在します。
教育的な指導と暴力の境目の判断はとても難しい問題です。一発だけなら殴っても良いけど二発目からはNG!!とか回数で区切れる問題ではないですし、生徒側に問題があり先生が口で注意しても生徒が反省しない、など実際にその場にいた者にしかわからないケースが殆どなので”絶対に駄目だ!!”などと紋切り型に言うつもりはありません。月並みかもしれませんが”愛のこもった拳(こぶし)”と教師がストレス解消の為に振るう”暴力”は生徒の側でわかる物です。
このエピソードの鬼瓦豪助の場合は・・・解放者達(リベレーターズ)と同様に自分がされて嫌な事は周囲の人にもするな!というケースですね。

これは1991年に発表された作品ですが、この記事を執筆時(2013年1月)にも大阪市の私立高校での体罰が問題化しています。

血と爪・・・20年来の幼馴染である二人の男女。二人は相思相愛で最近結婚したばかりだが新婚旅行から帰った夜、夫が一時間ほど外出している間に妻が何者かに殺されてしまう。失意の日々を送る夫の元に差出人不明の宅配便で”死者を蘇らせる方法”を記した黒魔術の本が送り届けらる。



ホラー、オカルトを題材にしたフィクションの世界で死者を蘇らせようとする場合、ある種の御約束のような物があります。詳しくは書けませんが子供の頃に初めて読んだ時に(アウターゾーンは他のホラー、オカルト系漫画とは一味違う)と思わせてくれた話です。

デス・ファイヤー・・・高校生の有川陽は他人の”死”を見通す能力を持っている。しかし彼はこの能力を好ましく思ってはいなかった。何故なら人の死を見通すといっても死期が迫った人間の顔の周りに炎が見えるだけで、どういう形でいつ死が訪れるかまではわからないからだ。
ある日、陽は幼馴染・桜井はやみと数年振りに再会するが彼女の顔にも”死の炎”を見てしまう。


絶望的な状況に追い込まれた主人公が困難を乗り越える為に努力をして成長する、という少年漫画の王道的な展開。
ラストでミザリィが語る”運命は神様や悪魔が決めているものではなく未来は人間の意志で作られる”という台詞。これは『デス・ファイヤー』だけでなく『アウターゾーン』全編に共通するテーマです。この後もアウターゾーンには色々な人間が登場しますが不思議な力に依存するだけの人間と自分の力で切り抜けようと必死に努力する人間では結末は必然的に違ってきます。

番外編・三人の訪問者・・・ドライブ中に道に迷った三人の若者は山の中で偶然ミザリィが経営するペンションにたどり着く。ミザリィは「今まで経験した不思議な体験があれば、それを話して欲しい。その話が面白ければ宿泊料は無料にしても良い。」と三人に提案する。



アウターゾーンは「ママと悪魔」から「デス・ファイヤー」までの全10話の予定で連載を開始したものの予想外に評判が良く連載継続が決まったがそのまま継続しても作品のクオリティーを保つ事は難しいと光原 伸先生が判断した為に一旦は予定通り10回で終了し約半年後に第二部という形で復活したという経緯があります。

この番外編は一部終了から二部開始までの間に週刊少年ジャンプに掲載された企画漫画。

読者が経験した不思議な体験を募集しその中から3本を選んで漫画化した話なのですが、この本の最後に作者の光原 伸先生の後書きがあり、その中に

漫画化した3本より面白いレポートはあったのだが、取材拒否や作り話などで、使えない物が多かった

とあります。

そういう事も影響しているのでしょう。
(どこかで読んだ・聞いた事のある話の寄せ集めだなぁ)
というのがこの番外編の個人的な感想です。


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