2013年1月31日木曜日

アウターゾーン1(OUTERZONE 1)

アウターゾーン 1 (OUTERZONE 1)

光原 伸(集英社)
473円で購入

1991年から1994年まで週刊少年ジャンプに連載されていた作品。例外もあるがほぼ一話完結形式で、現実と隣り合わせに存在する世界(アウターゾーン)に迷い込んだ人間が巻き込まれる事件をアウターゾーンの案内人(ストーカー)である不思議な美女・ミザリィが紹介していく、という体裁で進行していく漫画です。

”案内人”を”ストーカー”と呼ぶのは1979年公開のロシア映画「ストーカー」に由来するようです。

ミザリィはあくまで不思議な出来事、事件を読者に”紹介する”だけで毎回数コマくらいしか出番はありません。不思議な出来事、事件を乗り切るのはその一話限り登場する普通の人達です。

3年間も連載されていたので一定数のファンが存在するのは間違いないのですが同時期に連載されていたバスケットボール漫画の金字塔『SLAM DUNK/井上雄彦』や幽霊や妖怪とのバトル漫画の『幽☆遊☆白書/冨樫義弘』『地獄先生ぬ~べ~/原作:真倉翔・作画:岡野剛』などと違いアニメ化はされなかったのでそれらと比べると”知る人ぞ知る”少しマイナーな作品という印象は否めませんね^^;

私はファンだったのですが単行本の表紙に小学生男子が購入するには躊躇するエッチな感じのイラストが描かれていた事もあり連載時には購入出来ず、大人になってから何度も(もう一度読みたい)と思っていました。

約二十年前の作品なので新刊購入は当然無理だしamazonのマーケットプレイスなど中古市場で売りに出されているのはたまに見るものの商品の程度が確認出来ないのでずっと購入は見送ってきました。

しかしkindlepaperwhiteを入手してKindle ストアをチェックしていると、そのアウターゾーンが売りに出されているじゃないですか!!・・・・もちろん即購入しました^^b

ここまで作品に対する私の思い入れなどを紹介しましたが以下はこの巻掲載の各ストーリーの簡単な説明と感想などを書いていきます

ママと悪魔・・・あるマンションに母親と小学生の男の子が二人、母子家庭として暮らしている。母親はカルト宗教の信者。週末などに息子を連れて近所を訪ね歩き布教活動を繰り返すが上手くいかず、息子を虐待している。

ミザリィの不思議グッズを手に入れたあたりから母親の行く末は容易に想像がついてしまいますがそのラストに行き着くまでの展開が男の子にとって酷すぎるので規定路線のラストも”すかっとさわやか”爽快な気分になります。お隣のおねぇさんの存在もラストへの良い伏線になってます。

幸運の首・・・舞台はアメリカ。孤児院育ちで貧しい暮らしをしている男・ラリィは恋人・シンディと共に一攫千金を夢見てギャンブルが公認されている某都市にやってきた。
負けがかさみ家路につこうとした時、ラリィは路上の売店で不思議なお守り”幸運の首”を手に入れる。売店の店員(ミザリィ)の説明によると”幸運の首”は生前に強力な霊能力を持っていた呪術師が死後も霊能力を保つ為に自ら首を刎ねたものを干して乾燥させた作らせた、本物の干し首らしい・・・・

ラスベガスだと思いますが作中では何故かこのようにギャンブルが公認されている”某都市”とぼかした表現になっています。


”不幸な生い立ちの青年が不思議グッズを手に入れて大金を手に入れる”と言う単純なストーリーかと思いきや不思議グッズが呪術師の乾燥生首ですからね・・・・やっぱり一筋縄ではいきません。アウターゾーンに迷い込んだ人間は他力本願では幸せになる事は出来ません。

占いピエロ・・・りまは親友の麻紀が呆れるほどの占い好きの女子高生。
ある日、二人は学校帰りに地下街にある占いの店に行くが店の前には大勢の客が行列を作っていた。暇潰しに地下二階の寂れた店舗街を散策した二人は奇妙な占いマシーンを見つける・・・・


子供の頃によく行っていたゲームセンターに同じようなピエロ型占いマシーンがあったので雑誌掲載時に読んだ後はしばらくの間、そのゲームセンターに行けなくなりました(笑)
占いに頼りたい気持ちもわかるけど度を越すと怖い事になるよ、という教訓的な話ですね。

真夜中の獲物・・・高級車を駆り繁華街に繰り出し、女性を物色する男。
今日も首尾よく一人の女性を誘う事に成功したが男の目的はナンパではなく、快楽殺人のターゲットをみつける事だった!


高級車でナンパとかバブルの余韻を引きずっていた時代を象徴する設定ですね。
高級車に乗った男性にナンパされても簡単について行っては駄目!快楽殺人は絶対駄目!!ですね。

あの日から・・・ある暴力組織の下部構成員・江藤明。
1991年、彼は対立組織の幹部を襲撃する鉄砲玉の役割を任されるが反撃を受け自らも重傷を負ってしまう。タクシーを拾い現場から逃走するが行きついた先は1971年の故郷だった。


良い話なんだけどこれは子供向けというより”大人向けの話”です。小学生の時に読んだ時は人生の分岐点とかいわれてもピンと来なかったけど大人になった今なら理解出来ます。と言うか大人でなければ理解出来ないでしょう。
掲載誌が週刊少年ジャンプでありながらこういう”大人向けの話”が時々あったのもアウターゾーンが”知る人ぞ知る”少しマイナーな作品になってしまった一因かもしれません。

呪いの人形を追え!!・・・典子はニューギニアから帰国した父親が購入してきた”呪いの人形”に好奇心から自分の髪の毛を入れてしまう。観光客向けに作られた偽物だと思っていたのだが、それは本物の”呪いの人形”だった。


この話に関しては「そんな気味の悪い人形を買うなよ!」としか言えません(笑)
これは”読後に何か心に残る”という事もない、単純にオカルト的な物”呪いの人形”を題材にした娯楽漫画です。お父さんが元・高校球児で良かった^^b

解放者達(リベレーターズ)・・・ペットの飼育が禁止されているマンションに引っ越す事になった一家。父親は息子が寝静まった夜に車を走らせ飼い犬・ブチを山に放置するがその帰り道に事故を起こしてしまう。その一週間後に目を覚ますと地球は犬型宇宙人に征服されていた。


某有名SF映画の影響がうかがえる話。
私も子供の頃に犬を飼っていましたが、犬を飼い始める前に両親から最期まで責任を持って飼う事が出来ないなら許可しないと言われました。またペットの話とは少しずれますが幼稚園の頃に自分がされて嫌だと思う事は周囲の人にしてはいけないとも言われました。そういう事を思い出させてくれるエピソードです。

笑う校長・・・体罰で生徒を死なせてしまった教師・鬼瓦豪助。”生徒を殺した事”で解雇された彼は”ある私立高校”からヘッドハンティングを受ける。


体罰の問題は時代に関係なく存在します。
教育的な指導と暴力の境目の判断はとても難しい問題です。一発だけなら殴っても良いけど二発目からはNG!!とか回数で区切れる問題ではないですし、生徒側に問題があり先生が口で注意しても生徒が反省しない、など実際にその場にいた者にしかわからないケースが殆どなので”絶対に駄目だ!!”などと紋切り型に言うつもりはありません。月並みかもしれませんが”愛のこもった拳(こぶし)”と教師がストレス解消の為に振るう”暴力”は生徒の側でわかる物です。
このエピソードの鬼瓦豪助の場合は・・・解放者達(リベレーターズ)と同様に自分がされて嫌な事は周囲の人にもするな!というケースですね。

これは1991年に発表された作品ですが、この記事を執筆時(2013年1月)にも大阪市の私立高校での体罰が問題化しています。

血と爪・・・20年来の幼馴染である二人の男女。二人は相思相愛で最近結婚したばかりだが新婚旅行から帰った夜、夫が一時間ほど外出している間に妻が何者かに殺されてしまう。失意の日々を送る夫の元に差出人不明の宅配便で”死者を蘇らせる方法”を記した黒魔術の本が送り届けらる。



ホラー、オカルトを題材にしたフィクションの世界で死者を蘇らせようとする場合、ある種の御約束のような物があります。詳しくは書けませんが子供の頃に初めて読んだ時に(アウターゾーンは他のホラー、オカルト系漫画とは一味違う)と思わせてくれた話です。

デス・ファイヤー・・・高校生の有川陽は他人の”死”を見通す能力を持っている。しかし彼はこの能力を好ましく思ってはいなかった。何故なら人の死を見通すといっても死期が迫った人間の顔の周りに炎が見えるだけで、どういう形でいつ死が訪れるかまではわからないからだ。
ある日、陽は幼馴染・桜井はやみと数年振りに再会するが彼女の顔にも”死の炎”を見てしまう。


絶望的な状況に追い込まれた主人公が困難を乗り越える為に努力をして成長する、という少年漫画の王道的な展開。
ラストでミザリィが語る”運命は神様や悪魔が決めているものではなく未来は人間の意志で作られる”という台詞。これは『デス・ファイヤー』だけでなく『アウターゾーン』全編に共通するテーマです。この後もアウターゾーンには色々な人間が登場しますが不思議な力に依存するだけの人間と自分の力で切り抜けようと必死に努力する人間では結末は必然的に違ってきます。

番外編・三人の訪問者・・・ドライブ中に道に迷った三人の若者は山の中で偶然ミザリィが経営するペンションにたどり着く。ミザリィは「今まで経験した不思議な体験があれば、それを話して欲しい。その話が面白ければ宿泊料は無料にしても良い。」と三人に提案する。



アウターゾーンは「ママと悪魔」から「デス・ファイヤー」までの全10話の予定で連載を開始したものの予想外に評判が良く連載継続が決まったがそのまま継続しても作品のクオリティーを保つ事は難しいと光原 伸先生が判断した為に一旦は予定通り10回で終了し約半年後に第二部という形で復活したという経緯があります。

この番外編は一部終了から二部開始までの間に週刊少年ジャンプに掲載された企画漫画。

読者が経験した不思議な体験を募集しその中から3本を選んで漫画化した話なのですが、この本の最後に作者の光原 伸先生の後書きがあり、その中に

漫画化した3本より面白いレポートはあったのだが、取材拒否や作り話などで、使えない物が多かった

とあります。

そういう事も影響しているのでしょう。
(どこかで読んだ・聞いた事のある話の寄せ集めだなぁ)
というのがこの番外編の個人的な感想です。


アフィリエイト広告アウターゾーン 1 (OUTERZONE1):光原 伸



0 件のコメント:

コメントを投稿