2013年3月8日金曜日

アウターゾーン3(OUTERZONE 3)

アウターゾーン3(OUTERZONE 3)

光原 伸(集英社) 473円

アウターゾーン22話から32話までが掲載されているビッグボリューム版の第三巻です。

表紙のイラストはビッグボリューム版の紙の本が出版された時に書き下ろされた物で週刊少年ジャンプで連載されていた頃の物とは違いますが一巻二巻と比べるとミザリィの露出が多くなってきてますね^^;

中身のストーリーはSFやオカルトがメインでエッチな表現は(週刊少年ジャンプ連載作品なので当然ですが)少年誌で許される範囲のサービスカットがあるだけなのに表紙が”ミザリィ押し”なのは相変わらずでそれがかえって懐かしいです(笑)


一巻二巻は全て一話完結のエピソードばかりですがこの三巻で初めて二話にまたがる続き物のエピソードが登場します。

23、24話の『タイムスケープ 前後編』

個人的にはこの三巻に掲載されている『見えない男』、『妖精を見た!』、『タイム・ストッパー』の三作は週刊少年ジャンプで初めて読んだ時の印象が強かった作品です。

以下、各話の簡単なあらすじと感想を紹介します。

本心・・・・平凡な高校生・梨村和也の最近の楽しみは学校帰りに骨董屋に立ち寄る事。といっても和也は骨董品に興味があるのではなくその店の店主、ミザリィに片思いしているのだ。
ある日、いつものように和也が店に入ると思いがけずミザリィに声をかけられ二人はデートをする事になるが・・・・


ミザリィの悪魔!いたいけな青少年になんて罠を仕掛けるんだ!!と大声で言いたいです。妙なグッズの呪いや不吉な未来を暗示する予言などは切り抜ける自信はあってもこの罠に心を惑わされない男性はいないはずです(笑)

タイムスケープ 前後編・・・・現在から50年後、人類は長年の夢である”時空移送機(タイムマシン)”の開発に成功したが世界は”時空移送機(タイムマシン)”の技術を独占する一つの独裁国家に支配されていた。
”時空移送機(タイムマシン)”の開発者であるキリシマ博士は独裁国家の支配者・大佐に反旗を翻し、”時空移送機(タイムマシン)”の存在を歴史から抹消する為に刺客を過去の自分の元へ送り込むが・・・・


自動車は交通規則を守って安全に乗れば便利だけど速度違反や信号無視をすれば危険な凶器だ、というように
「”危険な道具”があるんじゃない、道具の使い方を誤ると”危険”なだけだ」
と言われる事があります。

自動車ですらハンドルを握れば暴走する人間がいるのだから”時空移送機(タイムマシン)”なんて超兵機を人類が手に入れたら遅かれ早かれこういう世界になってしまうでしょうね^^;

この作品が発表されたのは1992年。現実世界では1990年に当時のサダム・フセイン大統領が指揮したイラク軍が隣国クェートに突如侵攻した事がきっかけで国連が多国籍軍を派遣した”湾岸戦争”が勃発しています。そういう世界情勢もあり当時は”サダム・フセイン”は独裁者・暴君の代名詞的存在でした。50年後の世界を支配している大佐のモデルはどうみてもサダム・フセインです。

2001年9月11日の「アメリカ同時多発テロ事件」をきっかけに始まったアメリカの対テロ作戦の流れで始まったイラク戦争によって2006年12月30日に死刑(Wikipedea/サダム・フセインより)・・・・時の流れを感じます。

消えた球(ボール)・・・・有川陽一は硬派ぶって誤魔化しているが女の子と話すのが苦手な高校球児だ。ある日、どこかから不意に飛んできた球(ボール)が頭にぶつかった衝撃で陽一は男性の頭の上には青色の、女性の頭の上には赤色の不思議な玉が浮かんで見えるようになった。


最後まで読み終えた後(玉の色が違う理由を知った後)に頭の上に浮かぶ玉の色が違うカップルの事を考えると少し笑えます。まぁ、大きな黒い玉が浮かんでないだけましかな(笑)

デス・フライト・・・・飛行機のファーストクラスで若い女性客が不審な死を遂げた。彼女の死体からは大量の血液が抜き取られており、首元には牙を突き立てられたような二つの穴が!!犯人は吸血鬼!?


密室の中で人が死に、事件の関係者を一堂に集めて犯人探し。
当時は『金田一少年の事件簿/原作:金成陽三郎(case2巻まで担当)、天樹征丸作画さとうふみや』が1992年に週刊少年マガジンで連載が開始されてヒットし推理物が漫画のジャンルとして成立した頃だったのでこういう路線のストーリーを作ったのかと思っていたんですが光原伸先生の後書きによるとあるホラー映画をモチーフにしたそうです。

ネタバレになるのでここでは詳しく書けませんが後書きには映画の内容にも触れられています。しかし先生自身もこの映画のタイトルは忘れてしまったそうです^^;私もこの映画について知りたいでの、心当たりのある方はブログのコメントなどで教えては頂けないでしょうか?

見えない男・・・・人付き合いが悪く仕事も出来ない男・細井。彼は内心では周囲の人間を馬鹿にしているが口に出す事も出来ない小心者。
日頃のストレス発散の為に無作為にイタズラ電話をかけるが電話を受けた相手はミザリィだった。
「あなたみたいに卑劣な小心者にぴったりの薬があるわ」
そう言ってミザリィは細井に”体を透明にする薬”を薦める。


もしも透明人間になる事が出来たら~してみたい・・・・誰でも一度くらいは考えた事がありますよね。漫画、小説などでもよく使われているネタで、一番多いのは透明人間になった男が女子更衣室などに潜入したところで薬の効果が切れて覗きがばれるというくらいの軽いオチが付くみたいなパターンですが細井の行動はそういう少年誌の枠には収まるような範囲の悪事だけではなかったのでオチがかなり悲惨な物になっています。


”軽いオチ”というのは漫画、小説などのフィクション世界の場合です。現実だったら覗き行為をしてばれたら人生が終了するくらいの事です。当然ですが覗き行為をしてはいけません!

不幸の確立・・・・幼い頃から(自分はツイていない、どうして不幸な目にばかり遭うのだろう)と考えている少年。
「あなたの未来に起きる不幸な出来事を占ってFAXで送ってあげる」
と言う言葉を信じて彼はミザリィの占いの客になる。FAXで事前に不幸な出来事の内容がわかるおかげで不幸を避ける事が出来て喜ぶが送られてくる”未来に起きる不幸”の内容が日に日に過激になっていく。


占いの内容が送られてくるツールがFAXという部分に時代を感じますね。今だったら電子メールとかSNSでのやり取りになりそうですね。
小学生の時、この話を読んで”人間万事、塞翁が馬”という故事ことわざの意味を理解しました。そういう話です。

あと本筋から離れた所で、電車の中で痴漢に間違われた男性と痴漢被害に遭った女性がその時の出合いがきっかけで数日後に恋人同士になる、という今だったら「いくら漫画でも不自然でありえない!」と編集段階で没になりそうな展開があるのですが当時は(痴漢に間違われてもきちんと説明すれば誤解だとわかって貰える)と考える人が多かったという事なんですね^^;

1992年頃

妖精を見た!・・・・普段はよく見かける物が必要な時に限って見当たらなくなり必要がなくなってからひょっこりと出てくる
誰でも何度か経験する事だが小学生の想一はミザリィから
「それは妖精の仕業かもしれない。ただし妖精は人に見つかる事を嫌うので見つけても見なかったふりをしなさい」
と忠告を受ける。
姿を見た事を妖精に知られたら命はない
とも・・・・


妖精といえばピーターパンのティンカーベルみたいに可愛い存在を思い浮かべる方が多いと思います。私もこの話を読む前はそうでしたが『妖精=可愛い』から『妖精=怖い』へとイメージが一変しました。ジブリ映画の『借りぐらしのアリエッティ』みたいに人間の物をを拝借してこっそり暮らすタイプの妖精、小人なら会ってみたいけどこの話に出てくる妖精は遠慮したいですね。

ちなみにこの話は詳しくは書きませんがラストが今までの話と比べると少々珍しい事になっています。

吸血鬼の町(ヴァンパイア・タウン) 前後編・・・・アメリカの某所。二人の男がゴーストタウンと化した町に辿り着く。男達は寂れた小屋の地下室で胸に杭を打たれた奇妙なミイラが納められた棺桶を発見する。
半年後、付近の町では旅行者などが行方不明になる事件が頻発するようになっていた。


前後編の二部構成ですが(えっ!?これで終わり?)という中途半端な結末です。

アウターゾーンが週刊少年ジャンプに連載されていた時は欠かさずに購読していたのでこの話も一度は必ず読んでいるはずなのですが今回、Kindle版を購入するまで印象に残っていませんでした^^;

タイム・ストッパー・・・・ミザリィのハンドバッグをひったくった不良高校生。バッグの中の腕時計に目を付けて時計盤の脇のボタンを押した時、体に突然衝撃が走り驚くが落ち着いて周囲を見回すと自分以外の全ての動きが停止していた。



TBS系のテレビドラマ『SPEC 警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿』で神木隆之介が演じた一 十一(にのまえ じゅういち)を観た時、この話を思い出しました^^;

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2013年3月1日金曜日

探偵はバーにいる

探偵はバーにいる (ススキノ探偵シリーズ) 

東 直己(早川書房)

571円

私がKindle ストアでこの作品を買った時は値引きセールの対象になっており286円で購入しました


2011年9月10日に大泉洋松田龍平主演で公開された映画探偵はBARにいる』の原作、ススキノ探偵シリーズの第一作。

映画一作目は小説二作目「バーにかかってきた電話」を原作にしておりタイトルのみシリーズ一作目の本作品から取っている(Wikipedeaより)。2013年5月11日に映画第二弾探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点』公開


映画一作目はまだ鑑賞していないんですが二作目が公開されるという事は一作目もヒットしたという事ですね。

二作目公開前にDVDをレンタルでもしようかな・・・・と考えていたところに、この『探偵はバーにいる』が前述のとおりKindle ストアでセール対象になっていたので購入してみました。

以下簡単なあらすじと感想を書いていきます。

札幌の歓楽街・ススキノで”便利屋”を生業にする”俺”。
ある夜、行きつけのバー・ケラーオオハタに大学の後輩・原田が訪ねてきた。同棲している彼女が行方不明になったので捜して欲しい、と泣きつく原田の話を(どうせ痴話喧嘩の末に女が男に愛想をつかした、という類の大した事のない話だろう)と軽い気持ちで引き受けた相談事だが調べていくうちに”俺”は彼女の周りで不審な出来事が起きている事に気づく。


世間的には職業不詳、自称”便利屋”の”俺”が主人公。
警察やヤクザ、果ては得体の知れないチンピラ共が絡んでくるような事件に巻きこまれながらも大した報酬は貰っていないようだし、周囲から”探偵”として面倒な相談を持ちかけられると「俺は探偵じゃないよ」と言いながらも結局は引き受けてしまうところをみると”俺”は人が好いようだ。

この作品は”俺”がかかわるススキノの人達(バーや風俗店の客引き、ホステス、娼婦、馴染みの居酒屋の店主など)が、”俺”とストーリーの本筋とは直接関係ないやりとり(会話など)をするような場面がちょくちょく出てくる。読者目線で見ると初めて登場する人物でも作中では”俺”とススキノの人達は顔馴染みなので他愛の無い会話や冗談を言い合ったりもしている。”俺”にとってみれば大学の後輩から頼まれた『行方不明の彼女を捜す』というのは本業(ぼったくりバーのカモになった客と店側の仲裁、トランプ博打での小遣い稼ぎ、バーの売掛金の回収など)の間にやる、些細な事という感覚でいるようで行方不明の女性を必死に捜したりはしない

つまり読者は積極的に事件を追う探偵の姿ではなく、小さな裏家業をこなして日銭を稼ぎながら気ままに暮らす、過去に何かがあった青年(28歳だが作中ではチンピラ共から”おっさん”、”じじい”などと呼ばれている)が、後輩にせかされながら渋々と事件に巻き込まれていく様子をみる事になる。

ミステリーの要素もあるが(事件の犯人は誰なのか?真相は?)などを推理するのがこの作品の醍醐味ではないと思う。

そういうミステリー要素よりも、事件を追ううちにかかわってくる謎の女や旧知のヤクザと"俺”の皮肉の利いた会話(ヤクザに”仲間”扱いされた”俺”が「俺は乞食じゃないよ」とか、「口にするのも恥ずかしいような事」と聞かされて「あんたが”言うのも恥ずかしい”てんなら相当なもんだよなぁ」と言ったり)の場面が見所。そういう台詞をニヤリとしながら読める人は読んでみてはどうだろう。

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