2013年6月29日土曜日

アウターゾーン4(OUTERZONE 4)

アウターゾーン4(OUTERZONE 4)

光原 伸(集英社) 473円

33話から42話まで掲載されているビッグボリューム版4巻です。

40話の『黒帽子』は3巻掲載の30話『妖精を見た!』の続編です。私の記憶が正しければ週刊少年ジャンプ掲載時は複数話(ページ数から推測すると3話くらい)だったと思うのですが、この4巻では一話としてカウントしているようです。


この4巻から始まる『マジック・ドール』は当初からシリーズ物として企画されていたようですがこの”妖精”シリーズはそういうわけではないようなので、よほど最初の『妖精を見た!』の反響が凄かったんですね。私も当時は家で何か物がなくなるたびに妖精か!?Σ(゚Д゚;)とビクビクしていたものです^^


以下、各ストーリーの簡単なあらすじと感想です。

救命艇に死神がいる・・・・沈没した豪華客船から救命艇に乗り込み九死に一生を得た数人の男女。医薬品や食料が残り少なくなった頃、一人の男が海に伝わる奇妙な伝説を語り始める。
船が沈む時というのは必ず乗客か船員の中に人間そっくりに化けた”死神”が紛れ込んでいるのだ、と・・・・



沈没した客船から命からがら救命艇で逃げ延びたものの極限状態の中で次第に精神に異常をきたす人間達。海洋パニック映画っぽい展開です。しかし二時間で一本の作品を作る映画とは違ってページ数に制限がある一話完結の漫画だから仕方がない部分もありますが救命艇での漂流が始まってすぐに「この中に人間に化けた死神がいるかもしれない。」と言い出した男(小説家)の行動は空気を読めなさすぎですね。

メンバーの中にミザリィがいるので「この中に死神(人間以外の存在)がいる」というのは間違いではないんですけどね^^

マジック・ドール①・・・・刑事の火牙(ひが)はコカイン取引の捜査中に誤って無関係の女性・マキを死なせてしまう。
わけもわからずに死んでしまったマキは”死者の門”の門番から自分は死ぬ予定ではなく”死後の世界”側の手違いで死んでしまった事を告げられてショックを受ける。
既に自分の体が火葬されてしまった為、門番から特例として最近亡くなった人間の体に乗り移っても良い、と言われるが条件の合う(若く健康で美人で金持ちである事)人間が見つからず困ったマキは一計を案じる。

 今回、この話を読み返すまでマキは火牙の拳銃誤射で死んだのだと思い込んでいたのですが実際には犯人の拳銃から流れ玉でした。とはいえ「女(マキ)に家族がいなかったのが不幸中の幸い」と言ってみたり、ラストにマキの死がトラウマになる事もなく普通に悪党に向けて拳銃をぶっ放したりと火牙刑事って案外薄情だったんですね^^;



ここは、どこだ!?・・・・突然、街中で目を覚ました若い男性。彼には、何故自分がそこにいるのか?、自分が何者なのか?という記憶が一切無い。困惑しながらも本能に突き動かされるように”街”からの脱出を試みるが・・・・

週刊少年ジャンプ掲載時にはマジック・ドール①の次の回だったという事もあり何か設定上の繋がりがあるのかな?と想像を膨らませていました。

落ちたグラス・・・・超能力者に憧れる高校生・村井は事故で頭を強打した事がきっかけで念願の超能力者になった。
村井は超能力を使ったスプーン曲げでクラスの人気者になるが人気に嫉妬したクラスメートが絡んできた。その時、突然クラスメートの腕に激痛が走り骨折してしまう。


超能力に目覚めた人間の葛藤が描かれた話。小学生の頃、クラスの人気者になりたくて手品の練習をした経験があるので物語り前半の村井は羨ましい限りです。

物語のクライマックスで人前で超能力を披露して”周囲から好奇の目でみられたり怖がられる”か”教祖扱い”されるかで村井が悩む場面がありますが私だったら”教祖扱い”される事を選びます^^

マジック・ドール②・・・・”死後の世界”の手違いで死んだ女性・坂内マキ。彼女は現世に戻る為に一時的に着せ替え人形に魂を宿らせ、自分が死ぬきっかけを作った火牙刑事の元に身を寄せ同居生活を送っている。

マキとの同居生活が始まって以来、周囲から着せ替え人形マニアだと誤解され始めた火牙。彼は誤解を晴らす事が出来るのだろうか?

話の本筋とはずれますが火牙刑事、外車に乗ってます。公用車とは思えないので自家用車を仕事にも使っている、という事でようね。

パッと見だと外観はフェラーリかランボルギーニっぽいので刑事の給料で買えるとは思えないし・・・・火牙刑事の実家はかなり裕福なのかな?
新車ではなく中古、という可能性もあるけどフェラーリ、ランボルギーニなどの超スーパーカーだと年式や車の状態にもよるけど中古でも国産の高級セダンを新車で買うくらいの値段はするしそれだけの金を払って中古のフェラーリorランボルギーニを買ったのならかなりの”カー吉”という事?

ゲームの達人・・・・勉強や運動が苦手で家にも学校にも居場所がない高校生・古橋。

彼は日常生活の鬱憤を晴らす為にゲームセンターに入り浸り、周囲の客から一目置かれるようなゲーマーになるがそこはミザリィが経営するゲームセンターだった。

格闘ゲームがこの話の重要アイテムになってます。現実の世界では1980年代後半から1990年代前半頃はアーケード版の格闘ゲームが流行しており私自身も(小学生の感覚としては)かなりの金額をつぎ込みました。

またこの頃は格闘ゲーム以外にテトリスに代表される落ちゲーも一世を風靡しており、同年代のゲーム好きは格闘ゲーム派と落ちゲー派に分かれてたのを思い出しました。

無情の街・・・・人類が宇宙に進出した未来。
厳しい環境と当局に管理された生活、人口密度の高さから地球の植民星で生きている人達は人間性を失っていた。

路上で人が死んでしまっても誰も関心を示さず、稀に困っている見ず知らずの人を心配して声をかける者がいれば声をかけた者が不審者扱いされるような環境の中、植民星の生活に馴染めない女性・リサはある日、一人の親切な男性・ルークに出合う。

こういう”歪んだ体制に違和感を感じる少数の人間の物語”は長編漫画ならば協力者、理解者らと出会って体制を変化させる、という結末に向かって徐々に話を展開させていく事が出来ますが一話完結のアウターゾーンの場合はどうなるのかな?と期待しながら読み進めたのですが・・・・そう来ましたか^^;

二巻掲載『森の妖怪』みたいな思い切った展開のハッピーエンドでも良かったと思うのは私だけでしょうか?

黒帽子・・・・かつて恐ろしい妖精に襲われた少年・長坂。

16歳になった今も当時の恐怖を引きずって生活していた長坂は高校の美術部の合宿に参加した夜、以前よりも凶暴な種族の妖精・黒帽子と遭遇してしまった!!

ホラー映画でも一作目がヒットして続編が製作される場合は一作目よりも主人公達がおかれる状況はより切迫したものに、モンスターもより凶暴に、という具合になっていくのが当然ですがアウターゾーンの妖精シリーズも例外ではありません。前回の妖精は”人間に姿を見られたから”という理由があって人間(長坂)を襲ったわけですが今回の黒帽子は特に理由もなく人間を食べる為に襲ってきます。

しかも前回は長坂に親切だったミザリィも何故か今回は積極的に妖精退治に協力してくれないし^^;

老化・・・・「皺(しわ)だらけで動きは鈍いし、あんな見苦しい生き物になるくらいなら死んだ方がマシ。」と高齢者を蔑む不良高校生。
ある日、街で高齢の女性占い師に因縁をつけ金を脅し取るが仕返しとして”ある呪い”をかけられてしまう。

あらすじでは”ある呪い”と勿体つけて書きましたが、タイトルから予想出来ますね・・・・”老化してしまう呪い”です^^;

後書きで光原 伸先生が老人介護施設で働いている方から抗議を受けた、という主旨の事を書いています。詳しい事はわかりませんが、もしかしたら”悪さをした罰として老人になる呪いをかけらる”というのが”年をとる=嫌なこと”という風に感じた人もいるのかもしれません。

しかしこの話の主人公が「皺(しわ)だらけで動きは鈍いし、あんな見苦しい生き物になるくらいなら死んだ方がマシ。」という考えの不良高校生なので、本人が死んだほうがマシだと思っている”老人になる”という目に合わせる事が罰になっているだけで一般論として”年をとる=嫌なこと”とう事ではないのは当然です。

結末はあまり後味の良いものではありません。

マジック・ドール③・・・・マキが死ぬ原因を作った火牙刑事と着せ替え人形に乗り移ったマキ。時折衝突しながらも折り合いをつけながら奇妙な同居生活を続ける二人。そんな二人の生活を監視するように向かいのマンションから覗く人形マニアの男がいた。

数年前にVillage Vanguard (ヴィレッジヴァンガード)でジョジョの奇妙な冒険』の超像可動シリーズのフュギュア・第三部スタープラチナを偶然見かけて購入した事がきっかけでそれ以降、超像可動シリーズの新作をチェックするようになったのでこの人形マニアの気持ちが少しわかるような気がします。

フュギュアは生産数が少ないので一度買い逃すとなかなか入手出来ないので、自分が持っていない物を見かけると欲しくなってしまうんですよね^^;

でも窃盗はいけませんねw

アウターゾーン 4 (OUTERZONE 4):光原 伸